繰り返し、読む。
「黄金旅風」も何度も読み返す本の一つだ。
初めて読んだのはかれこれ7~8年前、文庫化したときのことだ。時代小説を読まないわけではないけれど、飯島和一さんは知らなかったし、読んだこともなかった。周囲の本好きに薦められるままに一読。おもしろさに驚嘆した。
江戸時代の長崎、鎖国前夜の閉塞感や圧迫感のある時代の中で、己を貫き、生き抜いた男たちの物語。一気に引き込まれ、物語の世界に飲み込まれた。今まで読んでいなかったこと、飯島和一という作家を知らなかったことを恥じるほどだった。
それ以来、「黄金旅風」はたびたび読み返す本になった。
かれこれ5度、6度と繰り返し読んだ。
本を読み返すことのおもしろさに、読むたびに違う場所(もちろん、同じ場所はずっとおもしろい)のおもしろさを発見し、作品から受ける印象もどんどん変わることがあげられる。読むときの気分も違うし、それまでにしてきた経験が読ませる部分を変えているのだろう。だからこそ、何度も読む。「黄金旅風」のように初めから面白くて何度読んでも面白い本もあれば、初めはよくわからなかったけれど、だいぶとたってから面白さに気づかされる本もある。だから、読書は面白い。
これからも、新しい本に出会い、昔読んだ本に再び違う形で出会って行くのだろう。
楽しからずや。
ディオン・タイソン・ロッドマン・カントナそしてガッザ。
スポーツが好きで、雑誌のNumberをよく読む。
自伝(正直つまらないものも多いけれど)もよく読む。
どうせ読むなら破天荒な選手の自伝をお勧めする。
品行方正な選手の成功譚はテンプレートのような内容が多くて退屈だ。
それが好きな選手のなら何も言わないけれど。
タイトルに挙げた名前はいずれ劣らぬキャラクターを持った名プレーヤーだ。
ディオン・サンダース(アメリカンフットボール選手にしてメジャーリーガー。確か同じ週に両方の試合に出場した唯一の選手、ワールドシリーズとスーパーボウル両方に出た唯一の選手とかwikiに載っていたような。プライムタイムのあだ名通りのスーパースターだった。今までで1番好きなフットボーラーだ。)
マイク・タイソン(言わずと知れた名ボクサー。アリを知らない世代なので、最強はタイソンのイメージが強い。相手の耳を噛みちぎったり、刑務所に放り込まれたりとこれまたものすごい経歴。)
デニス・ロッドマン(NBAの殿堂入りした名ディフェンダーにしてリバウンダー。実力は折り紙付きだったが、問題も多い。過去形にならないのは引退後もお盛んだから。マイケル・ジョーダン以上のバスケットボールプレーヤーはいないと思うが、ロッドマンも忘れられないプレーヤーだ。)
エリック・カントナ(フランスの名サッカープレーヤー。マンチェスター・ユナイテッドの7番と言えばCR7でもベッカムでもなくエリック・ザ・キングだ。強烈な存在感と圧倒的な実力。そして観客に「カンフー・キック」を見舞って残りシーズン全て出場停止などトラブルも超一流。)
ポール・ガスコイン(イングランドの名サッカープレーヤー。全盛期はグラスゴーかトテナム時代。90年のイタリアW杯など記憶に残る華のあるプレーヤーだった。それ以上にキャラクターも面白かった。残念ながら引退後は悪いニュースばかり聞く。)
ディオンとカントナの自伝があるのかは知らない(少なくとも読んではいない)けれど、他の3人の自伝は面白かった。
でも1冊となればガスコインの自伝「ガッザの涙」だ。90年W杯で一躍時の人となったガッザの歩みが実に率直に描かれている。
麻薬やアルコール、鬱も隠さず告白するし、数々のイタズラ、トラブルも出るわ出るわ。極め付けの暴露はW杯でのイングランド代表キャプテンだったブライアン・ロブソンの途中帰国の理由(これは読んでください。唖然とします。)。原書はイングランドでsports book of the yearに選ばれた(権威のほどはわからないけれど)非常に出来の良い自伝です。
破天荒でないスポーツ読み物ならディビッド・ハルバースタムの「ジョーダン」が一押し。ただのマイケル・ジョーダンの伝記ではなく、ジョーダンを中心に据え、彼が活躍した時代のアメリカのスポーツはもとより、社会や、世界を見事に描ききった名著です。バスケットボールやアメリカへの愛が溢れる作品です。
たかがスポーツ、されどスポーツ。ゴーストライターが書いたただの金儲けのための本もあるにはあるけれど、中には一読の価値ありの本もありますよ。
- 作者: David Halberstam,デイヴィッドハルバースタム,鈴木主税
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1999/06
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
手袋をさがす
数年前鹿児島へ一人旅に行って以来、向田邦子さんのエッセイを読むようになった。
向田邦子さんのエッセイには家族や友人、仕事などごく普通の人たちの人生が描かれている。そして生きて行くことについてハッとさせられるような、そしてホッとさせられるような特別な輝きがある。
エッセイにはと書いたのは代表作のドラマ、「阿修羅のごとく」も「寺内貫太郎一家」も観ていないからである。そもそもテレビをほとんど観ない。
なぜ鹿児島へ行って以来なのかと言うと、旅行中に時間があまって何となく入った「かごしま近代文学館」の展示がきっかけだった。幼少期に鹿児島で数年を過ごした向田さんは鹿児島を故郷のようなものに感じていたそうで、死後に遺品が寄贈され、文学館に向田さんの部屋が再現されているのである。
余談ですが、「かごしま近代文学館」の展示は良質です。鹿児島ゆかりの作家(結構たくさんいます)が紹介され、その魅力が伝わって来る展示がされています。文学館の運営は大変そうだけれど、ずっと続けて欲しい。訪れた人に素晴らしい作品、作家との出会いを与え、何かのきっかけを与えられる特別な場所だから。
その向田さんの部屋には遺品とともに向田さんが残した作品も置かれ、また代表作の一節が紹介されている。その中の一つが表題の「手袋をさがす」だ。講談社文庫の「夜中の薔薇」に収録されている本作の内容は是非読んでいただくとして、わずか一節で当時抱えていた、行き方への焦燥や、不安、もやもやした感情を包み込んでくれたように感じた。文学館を出てすぐに講談社文庫を買って、その日のうちに全て読んだ。そもそも旅の目的はただ「九州新幹線を終着駅まで乗ってみる」だけだったのだが、この旅はこの作品に出会うための旅だったんだとその時強く思ったのを覚えている。
「手袋をさがす」は読んだ人に勇気を与え、背中を押してくれるような作品です。向田さんの使う日本語も、すごく綺麗で、今は使わないような(でも使ってみたくなる)表現もあったりで、とても参考になります。迷っている人、良質なエッセイを読みたい人、向田邦子さんの本は本当にいいですよ。
一年前の祈り
お客様第一について。
最近、転職した。
そこで言われるのが、お客様第一ということ。
曲者である。
研究職など一部の職業を除き、多くの職業には相手=お客様がいる。
当然お客様あっての仕事だからそこに合わせるのは当たり前だ。
しかし、どこまで合わせるのだろうか?
勤務時間が終わった後に今からよろしく、休みの日によろしく。
日本ではこれも当然だろう。
そうしなければ仕事にならない。
でも、どうなんだろう?
お客様第一は勤務時間内の話ではないのか。
休みは休み、仕事は仕事。そこは明確に線を引くべきだ。
休みの日にもお客様第一で、いつでも行けます、それでは休みではない。
そんな切り替えのできない生活で生産性が上がるとは思えない。
そこまでして働いたところで、社会は良くならない。
むしろ悪くなる。
ちゃんと働き、ちゃんと休む。
そういう社会の方が幸せじゃないのかな。
収益を上げるより人生をトータルで豊かにすることの方が大切ではないかな、
と休日出勤するので書いている。
ブログを書いてみよう。
ふと思い立って、ブログを書いてみようと思う。
特に目的意識とかはないのだけれど、日々思ったことや
読んだ本、行ったところなど、面白いと思ったことを書いて
発信してみたい。
それが誰かと共感できる部分があれば喜ばしいことだと思う。