ベルベル人の少女と民族衣装と神戸ファッション美術館

Wikipediaベルベル人を検索するとムザブ人の少女の写真がある。

1910年撮影(ナショナル・ジオグラフィック1922年10月号掲載と書籍のキャプションには掲載)。とても印象的な写真だ。

 

 この少女が表紙の本が「100年前の写真で見る世界の民族衣装」。ジャケ買いした。冗談はさておき、これはとても貴重な写真が掲載されている素晴らしい書籍です。

今の時代、部族社会や宗教的に厳格な国を除けば、世界中で同じ服が着られるようになった。アメリカと日本、ドイツ、南アフリカ、ブラジル・・・どこでもNIKEのアパレルは手に入るし、H&Mの服やユニクロも手に入るだろう。ファストファッションでなくても、西洋のルールで作られた衣服を普段身に付ける人の割合が多いだろう。逆に言えば日常的に着られていた民族ごとの衣装の多様性は失われてしまった。

この本はその今は見ることのできない日常的に着られていた民族衣装を身に纏った人々に焦点を当てている。地域、階層、用途などに分類されている。写真に写る彼らは誇りに満ちていて、とても美しく人類のかけ値ない文化を感じさせる。モノクロ、モノクロに着色したもの、カラーなどが混じっているが、パラパラめくるだけでとても楽しい。地域ごとの違い(類似も)、風土の違い、文化の違いを感じられる。

この本とコラボレーションした素晴らしい展示を行った美術館がある。

(2015年かなと思ったが2014だった、時が経つのは早い)

神戸ファッション美術館で行われた「世界のファッションー100年前の写真と衣装は語るー」展だ。ファッションをテーマとした美術館として世界的にも有名らしい。過去に一度行ったことがあったので同展覧会で2度目の訪問(神戸市のポートアイランド六甲アイランドにあるのだが、関西人でも微妙に行きにくい気がする)。同美術館が所蔵している各国の民族衣装と本書の写真が展示され、比較できる非常に貴重な経験だった。美術館が持っている衣装の数々と収集のセンスにはただただ驚かされた。それについてはナショナルジオグラフィックのサイトに詳しく記述されているので、一読をお勧めします。展覧会は興味を惹かれたものはなるべく行くようにしているが、残念ながら心に響かないものもままある。だが、同展覧会は素晴らしい出来だった。

今は世界的に社会が変わって、均質化も進んでいる。衣服についてもそうだ。だから今から毎日和服を着て生活しましょう、あなたの国はこれが民族衣装だからこれを着なさい、と言うのは無理があるし、もはや意味もない。だけれども、同時に残念だなぁとも思うのだ。せめて和服を一揃い作ってみようかなとも思う。