繰り返し、読む。

何度も読み返す本がある。
書店でピンとくる新刊がなかったとき、絶対面白い本を読みたい(読んだことのない作家の本を読んで失敗したくない)とき、ふとあの本を読んだ頃の気持ちを思い出したいと思ったとき、そんなときに本を読み返す。

「黄金旅風」も何度も読み返す本の一つだ。

初めて読んだのはかれこれ7~8年前、文庫化したときのことだ。時代小説を読まないわけではないけれど、飯島和一さんは知らなかったし、読んだこともなかった。周囲の本好きに薦められるままに一読。おもしろさに驚嘆した。

江戸時代の長崎、鎖国前夜の閉塞感や圧迫感のある時代の中で、己を貫き、生き抜いた男たちの物語。一気に引き込まれ、物語の世界に飲み込まれた。今まで読んでいなかったこと、飯島和一という作家を知らなかったことを恥じるほどだった。

それ以来、「黄金旅風」はたびたび読み返す本になった。

かれこれ5度、6度と繰り返し読んだ。

本を読み返すことのおもしろさに、読むたびに違う場所(もちろん、同じ場所はずっとおもしろい)のおもしろさを発見し、作品から受ける印象もどんどん変わることがあげられる。読むときの気分も違うし、それまでにしてきた経験が読ませる部分を変えているのだろう。だからこそ、何度も読む。「黄金旅風」のように初めから面白くて何度読んでも面白い本もあれば、初めはよくわからなかったけれど、だいぶとたってから面白さに気づかされる本もある。だから、読書は面白い。

これからも、新しい本に出会い、昔読んだ本に再び違う形で出会って行くのだろう。

楽しからずや。

 

黄金旅風 (小学館文庫)

黄金旅風 (小学館文庫)

 

 

 

出星前夜 (小学館文庫)

出星前夜 (小学館文庫)