一年前の祈り

先日、芥川賞直木賞が発表された。

恐ろしいもので、つい最近書店員を辞めたところだというのに、候補作どころか発表日すら頭になかった。それはさて置き、受賞された滝口悠生さん、本谷有希子さん、そして青山文平さん、本当におめでとうございます。
芥川賞といえば昨年、又吉直樹さんが「火花」で受賞されて大きな話題になった。しかし、個人的にはその前回、「九年前の祈り」で第152回芥川賞を受賞された小野正嗣さんの方が印象深い。
当時、文芸書の担当だったこともあり、受賞後の書店向けのパーティでお目にかかった。芥川賞作家にして立教大学の准教授。上手くお話できるかかなり緊張したのを覚えている。ところが、いざパーティが始まると、そんな緊張をよそに、小野さんはとても気さくで、丁寧、明るい方で、参加した20ほどの書店のスタッフ1人、1人に長い時間をかけてお話をしてくれた。作品について、大学での仕事、受賞後の学生さんや、職員の反応、とりわけ選考を待つ間の話と受賞が決まった時のご家族の反応はとても面白かった。小野さんはこんな風に人と接していきたいと思わせる素晴らしい人だった。その後、テレビでお姿を拝見し、書店で作品を見るたびにその人柄を思い出す。書店を離れた今、芥川賞の発表を聞いて一年前のことを思い出した。小野正嗣さん、ありがとうございました。これからもずっと応援しています。

 

九年前の祈り

九年前の祈り